『使えない中高年』という表現に思うこと

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古地図の方位と足跡をデザインした画像。ノスタルジックな雰囲気を演出。

 「使えない中高年」や「働かないおっさん」といった表現が、X(旧ツイッター)で目に留まるようになって暫くです。

 還暦を過ぎた私にとっては「その表現は失礼じゃない?」と思うワケですが、でもまあ、そうつぶやいて発散するってあるよな、ぐらいに受けとめていました。

 ところが先日あるコンサルタントの集まりで、経営側がこうした従業員を「解雇する理由を模索している」ということを耳にして、少々驚きました。

 言われてみれば当たり前なのですが、「戦力になることを諦めてしまったかのような従業員の存在」は、規模が小さな企業ほど深刻な問題ですよね。

「自分で時間を作って学べ」とは、これ如何に?

 気になってネット上をいろいろと調べていたら、「人事担当が考える中高年人材の課題1位は、自律的なリスキル(学び直し)の必要性」という記事(こちら)が出てきました。

 会社側としては、「変化に対応するために必要なことは、自主的に時間を確保して学んで欲しい」ということですよね?

 中高年ということは部下がいる立場の方が多いと思いますが、会社側と部下との間に立つことだけでも大変なこと。なのに、さらに「自分で時間を確保して学び直しなさい」ということになると、「知らんがな」となる人が出てきてしまっても、不思議なことではありません。

新時代の学びはオンライン学習で

 そんな背景があってのことなのでしょう、会社として、オンラインでの学びの場(研修)を従業員に提供するケースが急増しているようです。

 研修とはいっても、従来のように同じ時間に集まって受ける研修とは異なって、個人がオンデマンドで受けることができるという点が肝になっています。

 なので提供されている研修内容(特にスキル系)は、5分程度の動画を中心に組み立てられていることが多く、スマホとネット接続さえあれば、「いつでも、どこでも、ちょっとだけ」学ぶことが出来る便利さが最大の特徴です。

 ラジオで英会話を勉強していた私からすると、隔世の感があります。

もっとチュートリアルを活用しよう

 ソフトウェアの使い方などスキル習得系のことを学ぶのであれば、会社として導入するような有料のものだけでなく、無料のチュートリアルがネット上にはたくさんあります。

 チュートリアルとは、動画による初心者向けの使い方ガイドのイメージです。

 ソフトウェア(アプリ)の使い方は、動画で説明するほうが分かりやすいため、今では YouTube 上などにひしめいている状態です。なので「まずは本を探そう」というイメージを今でもお持ちでしたら、それもう過去完了形。

 今風には、そのアプリを提供している事業者による公式チュートリアルを、まずは検索で探してみることです。

 私もチュートリアルを UMU (ユーム:オンラインの学習プラットフォームです)で公開していますので、実例として紹介しておきます。こちらの学習コースで、内容はUMUの使い方です。

 UMUにも公式のチュートリアルがありますが、私の場合は、UMUの特徴のひとつである「共有性の良さ」を内容に含めることで、UMUを発信源のひとつとして用いることができることをお伝えしています。

 このように、対象は同じでも、独自の視点を加えたチュートリアルがたくさんあるというところが、私的には面白い部分でもありますが、逆に数がありすぎて、自分にあったものを探すのが一苦労ということもありそうです。

 UMUのチュートリアルは、公式のものも私が作成したものも、どちらも公開設定になっていますので、利用者登録など余計な手間いらずでご覧いただけます。ご興味があるようでしたら、「いつでも、どこでも、ちょっとだけ」学ぶスタイルを、この機会に体験していただければと思います。

なぜ今になって「学び直し」なのか?

 さて、ネット上に存在する「役立ち情報」を活用すれば、職場で新たに導入が決まったアプリの使い方も学べそうだというところまでは、ぼんやりとでもご理解いただけたと思います。

 でも、面倒ですよね?

 というよりも、年代が高くなるほどに、パソコンで行う細々とした作業は、他の誰かに任せるようになっていたのではないでしょうか?とすると、せっかく面倒な作業から解放されたのに、「またあの頃に戻らなきゃいけないの?」と思えてしまうのも、当然といえば当然です。

パソコン画面の向こう側が大きく変わっている!

 実はこれには、背景があります。

 以前は、確かにパソコンに慣れた人に任せるのが全体としてみた時に効率的だったのですが、オフィス系の業務用ソフトウェアがクラウド化(解説はこちら)され始めたことで、その状況が180度変わり始めているのです。

 現在は、チーム全員が同じアプリを使うことで作業が大きく効率化できるようになっているのですが、『パソコン単体時代』の使い方が染みついている年代の方々には、これがなかなかイメージとして掴めないです。そのため、何が便利になったのかも分からないままでいると、周囲からすると考えられないようなミスを繰り返してしまう…なんて状態になりかねません。

 こんなことで「使えない中高年」みたいな失礼なレッテルを貼られてしまっては、やる気をなくしてしまって当然です。逆にレッテルを貼るほうも「以前は180度異なった常識」だったことを知らないから、そんなことを言えるワケですよね?

コミュニケーションのやり方からして違うんですけど!

 レッテルを貼る側と貼られる側。

 こうした分断を発生させないためには、もちろん普段のコミュニケーションが重要ということになりますが、でもここにもまた乗り越えるべき課題があるようで、それはコミュニケーションの取り方の違いです。

『自分のことは話すな』(吉原珠央著・幻冬舎新書)の表紙の写真。

 最近では、「自分の話が長い人」や「結論から話し始めない人」、「上から目線でしかものを言えない人」などなど、コミュニケーションのスタイルが昔のままという人も「使えない」のレッテルを貼られてしまうようなのです。

 どうやら「話せばわかる」や「飲めばわかる」というのが通じたのは、今は昔のようです。

 私がこのことに気が付いたのは、『自分のことは話すな』(吉原珠央著・幻冬舎新書)にたまたま出会ったからですが、最初のうちはこの本、読んでいて少なからずいら立ちを感じたのを覚えています(今はもう大丈夫です)。

 そうすると今度は、「なぜそこまでコミュニケーションのやり方が変わったのか」に興味が行くワケですが、それはまた別の機会にということで、今回はここまでにしておきます。

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